2005年06月17日

「両名とも死罪である」

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アレクサンドロスに心から忠実なヘファイスティオンが、
問題を起こすエピソードがある。
このエピソードは必ず出てくるわけではなく、まだ2作品にしか出会ってない。

同じようなエピソードでも書き手によってまったく印象が違うのがまた楽しい♪
今回は書き手が女性と男性なのでこれまた興味深いです。
まずはこちら。

アレクサンドロスと少年バゴアス/メアリ・ルノー (著), 堀 たほ子
父王の代から高等書記官であったユーメネスと、
顔を合わせば口論をしていたというヘファイスティオン。
一時はユーメネスに無礼を働いた形になったヘファイスティオンに向かって、
アレクサンドロスが謝罪するよう促す。
しかしヘファイスティオンが、珍しく!頑なに謝罪しようとしない。
ある時流血沙汰目前まで二人は口論をしていた。
見咎めたアレクサンドロスは両人に向かってこう言う。

「ただちに争いを中止するよう命ずる。違背すれば死罪である。
ふたたび争いが生ずれば、両名とも反逆罪により裁かれよう。
しかして刑が下されても、予は減刑せぬ」
(P386)
言ったほう(大王)も言われた方も大きなダメージを負います。
全てはお互いを想う気持ちが強いが故です。
「予は減刑せぬ。」
アキレウスとパトロクロス、二人の絆は神話よりも強いものとされ、
しかもちょっと熱いものを感じる二人には衝撃の事件でした。
作品中でもこの事件は二人にとってかなーり傷ついた感じで、
その後ちょっとギクシャクしたりしてましたよ。(カワイイ)

獅子王アレクサンドロス 阿刀田 高 (著)

重臣達の中で副将の位置にあるヘファイスティオンと、クラテロス。
お互い、アレクサンドロスの愛顧を被りたいばかりに、時折衝突する。
やはり口論で刀傷沙汰になりかけた二人を見かねてアレクサンドロスはこう言う。

「今後このような諍いがあったら理由の如何、ことの是非を問わず、両者を死刑に処す」
(P525)


二人のどちらを最良の友するのかという問いにアレクサンドロスはこう答える。

「クラテロスはマケドニア王の友であり、ヘパイスティオンはアレクサンドロスの友である」
うまく締まってるなあ(笑)
こちらのへパイスティオンはアレクサンドロスとの特別な関係に恋愛の感情を感じさせず、
もっと霊的な部分での繋がりが強調されているだけに、アレクサンドロスがこんなことを
言っててもあまり衝撃はないかも。
だからこそクラテロスという人気者を引き合いに出してみたんでしょうか。

ここのシーンを読んで、ああ、確か「アレクサンドロスと少年バゴアス」(前述)では、
だいぶ重たいエピソードだったよなあ、と思い出したのでした。


★補足追記(6/20)
「両名とも死罪」エピソードについて
「プルターク英雄伝」での情報をいただきました。

プルターク英雄伝とは・・・
Amazonで検索したところ、こんな感じ。

プルターク英雄伝 潮文学ライブラリー プルターク (著), Plutarchos (原著), 鶴見 祐輔 (翻訳)
Amazonより概要
西洋文明の淵源たる古代ギリシア、ローマに活躍したアレキサンダー等の英雄の波瀾万丈の生涯を生き生きと描き、理想の人物、人生とはいかなるものかを示唆する英雄伝の白眉。89年刊潮文庫全8巻から選録。

プルターク英雄伝 9 (9) 岩波文庫 赤 116-9プルターク (著), 河野 与一 (翻訳)


・アレクサンドロス編47
 クラテロスとの諍いとアレクサンドロスの両名とも死罪の言。

・エウメネス編2
 エウメネス(ユーメネス)との諍いとアレクサンドロスのヘファイスティオンへの叱責。

これを組み合わせたものが「アレクサンドロスと少年バゴアス」のエピソードのようです。
そして気づかなかったのが、ユーメネス=エウメネス。
プルターク英雄伝では他にも色々書いてありそうなのでぜひ読んでみたいと思います。
(情報いただきましたKOUさん、どうもありがとうございます)

プルターク英雄伝について、岩波書店のは10冊くらいあるようです・・。
いい加減図書館利用に変えようかなあ・・。
要調査で改めて記事に挙げる予定です。

(○の方を中古で安いのがあったので注文してみました。6/20)

余談ですが、エウメネスとユーメネス同じ名前と気づくまで少々時間がかかりました。
訳され方がさまざまなので、他にも気づいていないものが多そう・・
(ヘファイスティオン=へパイスティオンくらいは簡単ですけどねぇ。)
posted by アウラ at 00:56 | TrackBack(0) | 印象的なエピソード



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