
アレクサンドロス大戦記 (3)永遠の帝国
ヴァレリオ・マッシモ・マンフレディ (著), 草皆 伸子★★★★☆
さすが全3巻のラスト。かなり勢いがある巻でした。
アレクサンドロス大王の人生で一番濃厚な時期ですし。
最初に読んでおきたかった一冊です。
映画も見直したいし、少年バゴアス〜も読み直したくなります。
魅力的キャラ
・パルメニオン、ペリタス、エウメネス(感想には書いてないけど)
●印象深いところ数箇所
・
ペルセポリスの炎上、失策であったという説が強いこの事件。
この作品では納得の理由で、全てはアレクサンドロスの計算の上であったことが示されます。
あの炎上はどうかと問いただしに来たパルメニオンにその理由を説明しますが、パルメニオンが納得、もとい反論できないのだから凄い。
・
パルメニオンの最期はかなり絶妙な仕上がりだったように思います。
エウモルポスの指示で遣わされた刺客が彼を狙いますが、読み手側が妙に焦るが、
場面は静謐で、親和的で、乱れがない。
彼は使者に合言葉を訊ねる。
答える使者と、全てを悟るパルメニオン将軍。
一瞬時間が止まり、場面はゆっくりと哀しさが漂う。
同時に苦渋の決断をしたアレクサンドロスの悲しみをも感じられる。
そう!とても詩的なシーンでした。
・・彼の死後のアリスタンドロスとの霊的なやりとりはちょっと驚いたなあ。
・ペリタスの最期がとても雄雄しくそして悲しい。。
・(要調査)サティバルザネスかナヴァルザネスがレオンナトスと闘って敗れたシーン。
(どっちか名前、忘れた・・)
・カリステネスの死を伝えるプトレマイオスからアリストテレスに宛てた手紙のくだりは良い感じ。
・(要確認)ダレイオスの母親のシシュガンビスとアレクサンドロスとのやりとりがなんと良かった。
あなたは幸せだ、私の母は息子の葬儀に出ることはかなわない・
みたいなところが良かった。アレクサンドロスの巧みな話術が覗えます。●女性が結構頑張ってました。
・メムノンの妻バルシネの夫を失った悲しみと、敵を愛し始めてしまう複雑な想い。
さらには残された子供たちの思いも絡まってなんだか切ない。
そんなバルシネ、ガウガメラで亡くなっていますが、
史実では生き残り、アレクサンドロスの子を産んだということです。(あとがきより)
・アレクサンドロス自ら第一巻で奴隷の中から救い上げた少女レプティネ。
彼女の驚きの素性が明かされます。
史実では出てこない、この作品のみの創作の女性ですが、結構いい味でした。
●ヘファイスティオンについて
・待て待て、この最期はどうだろう(笑)。
ヘファ好きとしてはなんとも情けない。
ベッドに向かう途中に片手を挙げて絶命している姿を想像して悲しくなった。
でも現実は案外こんなものだったのかもしれないなあ。
その後、アレクサンドロスの施す盛大な葬儀も、武将としては切ない最期をもみ消すかのような印象が強すぎてなんとも感動できず。
・3巻通して、あまりパッとしなかった彼・・・
どこかにあったかなあ彼の光るシーンが・。思い浮かばん。
●バゴアスについて
・出てきました。ほんのワンシーンですが。
ペルシアの服をためらう(っていうか嫌がる)アレクサンドロスを納得させて、
流れるように仕上げていくバゴアス。
ギリシア語をしゃべれるのか、とアレクサンドロス。
しかしそれだけだったーー。